題詠blog2011001:初初雪を盆に集めて作りたり明日は融けゆく小さなうさぎ 002:幸 新しき年の幸せ願ひつつ年賀状には子うさぎを描く 003:細 正月のお宮の露店にならびゐき しんこ細工の小さなうさぎ 004:まさか まさかまさか私が負ける筈はない歩みののろい亀とのレース 005:姿 塀の下のほんの少しのへこみより兎スルリと姿現はす 006:困 ぴくぴくと耳を動かし黒うさぎ困つたやうに我を窺ふ 007:耕 耕せば野兎の来てまた荒らす おいかけつこの家庭菜園 008:下手 歌ふのが下手か苦手かできぬのか 兎の声をあまり聞かぬは 009:寒 あかはだかにされて因幡の白ウサギ蒲の穂綿に寒さをしのぐ(『因幡の白うさぎ』より) 010:駆 「ひとやすみ」があだとなりたり飛ぶやうに駆け登りたる山の五合目(『うさぎとかめ』より 011:ゲーム ゲームしてなかなか負けてやらぬゆゑオジイチャン少し嫌はれてをり 012:堅 竪琴のアルペジオより湧きあがる泉のやうな歓びの声 013:故 「故」の文字が母の名前につけられて短歌雑誌に遺歌が載りたり 014:残 福のある〈残り者〉なり四十まで独身でゐる我の娘は 015:とりあえず とりあへず謝るだけの智恵がつき会社勤めが軌道に乗りぬ 016:絹 誰かまだ覚えてますか日本初のミスユニバース伊東絹子を 017:失 失恋もうすむらさきの想ひ出となりて彩る老いの日頃を 018:準備 入院の準備整へ夜を明かす 陣痛間隔せまくなる娘と 019:層 ひつそりと時間の層に埋まりゆく逢ひしあの日も別れし時も 020:幻 幻のごとくかすかに瞬けり霧のむかうの町の灯りが 021:洗 チロチロと朝日に光り緑(あを)深し昨夜の嵐に洗はれし葉が 022:でたらめ 身を守る拙(つたな)き術(すべ)か四歳児すぐに見抜けるでたらめを言ふ 023:蜂 穏やかな長女なりしが子を産みて女王蜂のやうな貫禄 024:謝 口先で謝るだけ誠意なさ 夫の言ひたる「ごめんなさい」は 025:ミステリー 誰も誰も口をつぐみて結末はミステリーのまま次回へ「つづく」 026:震 地震とは地が震へだすことならず 地面狂ひて暴れ騒げる 027:水 まだ風の冷たき朝の水たまり鴨の雛たち散歩デビューす 028:説 母われに説教ばかりして行けり 三年ぶりの帰省の長女 029:公式 「あくまでも内定ですが」とことはりて非公式なる入賞通知 030:遅 門限に少し遅れて帰りたる娘は常より少しおしやべり 031:電 私が電話するたび「只今は電波の届かぬ場所にゐる」のね あなた 032:町 なつかしき紙の匂ひに満ちてをり 神保町の古書店の奥 033:奇跡 雨晴れて東の空にくつきりと奇跡のやうな大き虹立つ 034:掃 スイッチを入れるとピピッとガッテンし掃除ロボット動き始める 035:罪 罪のない笑顔でしらっと嘘をつく 四歳なりの智恵かもしれず 036:暑 帰り来て窓を大きく明け放つ 昼の暑さの籠れる部屋に 037:ポーズ 結婚し四十七年今のところプロポーズはまだされていません 038:抱 新しき首相の抱負聴きながら誰にも厳しき時と思へり 039:庭 庭隅の桜の下に埋めたりき愛犬なりしマルの亡骸 040:伝 駅前に必ずありし伝言版ケータイ電話に駆逐されたり 041:さっぱり 「いやなことはさっぱり忘れて寝てしまへ」いつしか座右の銘としてをり 042:至 山頂に至る最後の登り坂 覚悟を決めて一歩踏み出す 043:寿 てきぱきと働く女性増えてきて寿退社は死語となりたり 044:護 湖の護岸工事が成りてより蛍の光みかけなくなる 045:幼稚 幼稚園のお遊戯会に踊る児の数より多きカメラがならぶ 046:奏 フィナーレはやはり「じょんがら節」なりき吉田兄弟演奏会に 047:態 服装も態度も急にピシリとす 就活開始かとなりの息子 048:束 友が逝き反古となりたりヨー・ヨー・マを二人で聴きに行く約束は 049:方法 方法はまだ何かある 夕空を見上げてほつとため息をつく 050:酒 名月に誘はれるごと進みたりベランダに酌む清酒「白鷹」 051:漕 ボート部が漕艇部なりし昭和には荒川の水清らかなりき 052:芯 芯のある飯も笑ひて食べくれき新婚時代の若かりし夫 053:なう 泣きさうなうちべんけいの三歳児やうやく小さな声で返事す 054:丼 うな丼の〈たれめし〉が好きな五歳児がうなぎを皿にどけて食べをり 055:虚 思ふほど心虚ろになりてゆく若く逝きたる友の葬りに 056:摘 「そこんとこテンポが違う」と指摘してコンダクターが手拍子を打つ 057:ライバル 「ライバルは昨日の自分」と思ひゐき 若さあふれて元気な頃は 058:帆 するすると綱を登りて帆をを畳む日本丸の練習生は 059:騒 失くしたと子の騒ぎゐし小銭入れ電話の横に置き忘れあり 060:直 真直ぐに前ばかり見て歩き来ぬ 花見ず実も見ず空も見上げず 061:有無 財産の有無は問題外と言ふ しかし有るなら尚良かるべし 062:墓 「墓などは不要」が夫の持論なり それでも父母の墓参欠かさず 063:丈 丈夫なら不満を言ふのは贅沢と夫にまたまた諭されてをり 064:おやつ 遠足のおやつを子らと買ひたりき 百円以内と決まりゐし頃 065:羽 悠々と羽ばたきながら白鷺が沼のほとりを飛び立ちてゆく 066:豚 故里の夏には父母が使ひゐき豚の形のピンクの蚊遣り 067:励 励ましになるか煩いだけかなど悩みつつ書く被災の見舞ひ 068:コットン コットンとポストの底に音をたて応募原稿手を離れたり 069:箸 食べ初めに小さな赤き箸を買ふ「たくさん食べて大きくおなり 070:介 親切とお節介とを行き来して嫌はれてみたり好かれてみたり 071:謡 声深き地謡ひに乗り仕手が舞ふ閉じたる扇右手(めて)にかざして 072:汚 「汚れなき」は嘘かも知れぬみどり児も親の気をひく嘘泣きをする 073:自然 人間は自然の中の生物と思へば小さし我の悩みも 074:刃 刃をねかせスッと削ぎとる生ハムの透き通りさうに薄きひとひら 075:朱 雪の舞ふ伏見稲荷の参道に朱の鮮やかな鳥居が続く 076:ツリー 「七月のクリスマスツリー」と四歳が七夕飾りを風に靡かす 077:狂 音程の狂ふところも(味)となるほろ酔ひ加減のあなたの歌は 078:卵 ゆで卵のやうに黄色い芯を見せ白い睡蓮ほつかりと咲く 079:雑 持ち主の興味が移りいつよりか古雑誌となるバックナンバー 080:結婚 送り出す父母の気持ちは知らざりき 結婚すると決めしあの頃 081:配 配当を目当てに持ちゐし「堅実」な東電株が・・・オー・マイ・ゴッド! 082:万 さて次は私の出番プレゼンの準備万端整へて待つ 083:溝 いつの間に出来たる溝か 親友が知人となりて数年が経つ 084:総 人生の総仕上げ期に入りしか 七十歳は古来稀にて 85:フルーツ フルーツのやうにかはゆきミニトマト今日のサラダを華やかにする 086:貴 貴腐ワインのとろりと甘き舌触り我は好みて夫は好まず 087:閉 飛び込みて値下げの刺身を買ひあさる閉店時間の迫るデパ地下 088:湧 アイディアの湧かないままに時が経つ 言ひ訳さへも思ひつかない 089:成 成分はやる気と元気とお節介 よき老後への特効薬の 090:そもそも そもそもは他人に見せぬのが日記 公開ブログは日記に非ず 091:債 杳き日に文化を発信せしギリシャ今は国債危機を拡げる 092:念 「あなたには一念がない」と叱られき 退職願をだしし若き日 093:迫 迫力が桁違ひなるウオー・クライ 「カマテ、カマテ!」のニュージーランド (ラグビー、ワールドカップ) 094:裂 「口が裂けても言はない」はずの内緒事 あの人もまたこの人も知る 095:遠慮 後になつて残念がつてもだめですよ あなたのNOは時に遠慮で 096:取 大風に足を取られて立ちすくむ バスから降りて踏みだしし時 097:毎 題詠の100首毎年詠みあげてよくも悪くも九年目を終ふ 098:味 ひと口をふふみてじつと味はへり友の作りし自慢のワイン 099:惑 準惑星に格下げされし冥王星宇宙の闇にペース崩さず 100:完 古稀となりやつと悟れること一つ「この世に完璧・完全はなし」 ジャンル別一覧
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